多様化の時代:70年代
ファッションの「多様化」
ファッションの歴史はシーズンごとに変わるトレンド(流行)の歴史であったと言えます。トレンド(流行)とは多くの人々に共有される価値観、社会的な現象の一つで、価値観の特性です。
スカート丈やシルエットが一斉に打出され、それがトレンド(流行)になるのがこれまでの主流でした。ディオールのニュールックに代表される50年代までのライン時代、クレージュやマリークワントのミニスカートがその代表と言えます。
このようなトレンドは70年代をきっかけに大きく変化します。それは一言に「多様化」、バリエーションの時代に突入していきます。プレタポルテのコレクションの傾向も非常に多様化していきます。
デザイナー各自が思い思いにコレクションを発表し、消費者は自由に個人の好きなものを選ぶ、そして着る、それがファッションとなりました。
このような70年代に中心的な役割を担っていくデザイナーがケンゾー、イヴ・サンローラン、イッセイ・ミヤケ、カステルバジャック、ソニア・リキエルなどでした。
ビッグ・スカート
70年代は60年代ファッションの反動からクラシックな傾向がありました。60年代に流行したミニ・スカートから一転して、70年代に入るとロンゲット(longuette)という長いスカートや、ケンゾーが73年に打ち出したビッグ・ルックが話題を集めました。ビッグ・ルックはクラシックなロンゲットと違い、エスニックなルーツから生まれたもので、ワークウェアやスポーティーの性格があり、より広く一般のファッションとして受け入れられました。このことからも、オート・クチュールからプレタポルテへの移行が感じられます。
フォークロア・ファッション
ケンゾーの発表したフォークロア・ファッションは人気を博しました。彼は日本やアジア、アフリカ、東欧などの世界各地の民族衣装をテーマにしたコレクションを発表しました。彼の他にもイヴ・サンローランなどもフォークロア・ファッションを発表しました。
ケンゾーの活躍
ケンゾーのファッションは70年代のパリコレクションで中心を担い、常に話題を提供する存在となります。
彼のファッションの特徴は「多様性」でした。一つのシーズンのコレクションにはエスニックで装飾的なフォークロア・ファッション、クラシカルでベーシックなもの、スポーティブなものなどいくつかの柱があり、多様な提案をおこないました。
このような特徴に加え、アバンギャルドな若者ファッションのセンスを取り入れているが注目すべき点です。
プレタポルテがスタートし、既製服の方向へ向かいつつはありましたがこれまでパリで発表されるハイファッションの世界は若者向けのデザインやオリジナリティは脇に追いやられ、伝統的主義が残っていましたが、日本から身一つでフランスに渡ったケンゾーはそのような伝統主義を飛び越え、若者の圧倒的な支持を得たのです。
73A/Wニットを使用しワークウェアを取り入れた「農民ルック」、74A/W「ペルー・ルック」や着物や袴を取り入れたスタイル、75A/W中国ルック、76年S/S「アフリカン・ルック」、76A/W「インディアン・ルック」、77S/S「ギリシャルック」、79S/S「エジプトルック」など毎年話題を提供しました。
そしてこの時期からファッションショーが発表というより「ショー」の見せ方が中心となり、「ジャーナリズムに話題を提供する見世物にすることが、消費者に注目される」図式が成立していきました。もちろん中心にいたのは「エキサイティングで楽しいショー」ともっぱら評判だったケンゾーです。
このようにして70年代のファッションシーンは、60年代の活躍ですでに圧倒的な地位を確立したイヴ・サンローランとケンゾーがファッションリーダーに君臨して進んでゆくのです。
|